掲載している20社の公式サイトを1社ずつ確かめると、助成金に触れているのは7社だった。そのうち「事業展開等リスキリング支援コース」というコース名まで書いているのは、SHIFT AI for Bizと.Pro AI研修の2社である(2026年8月27日取得)。
コース名まで分かった人が次に打ち込むのは、たいてい「いくら」である。厚生労働省のパンフレットを開くと、率は確かに大きい。中小企業なら経費の75%。ところが、その表のすぐ下に、率より先に効いてくる数字が置いてある。
中小企業は経費の75%、大企業は60%
まず率のほうから。令和8年8月3日版の詳細版パンフレットに載っている表を、そのまま書き写す。
| 企業規模 | 経費助成 | 賃金助成(1人1時間あたり) | 設備投資加算(1コースの導入費用あたり) |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 75% | 1,000円 | 50% |
| 大企業 | 60% | 500円 | — |
賃金助成は、研修を受けている時間ぶんの給料に対する助成である。ただしeラーニング(=インターネット上で動画や教材を使って学ぶ形式)、通信制、定額制サービスについては経費助成だけで、賃金助成は付かない。
「75%が返ってくる」という理解は、ここまでは間違っていない。
上限は、研修の長さで3段階に切られている
同じパンフレットの次のページに、支給限度額の表がある。1人1訓練あたりの経費助成の上限が、実訓練時間数(=休憩や移動を除いた、実際に訓練を受けた時間)に応じて分かれている。
| 実訓練時間数 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
市販の生成AI研修は、1日から数日、時間にして10時間台のものが多い。ほとんどが一番上の行に入る。中小企業で、1人あたり30万円が経費助成の天井になる。
受け方によっては、この天井がさらに下がる。
15万円
eラーニングと通信制による訓練の場合、経費助成の限度額は中小企業で15万円、大企業で10万円になる。定額制サービス(=月額を払って講座が受け放題になる形式)なら、1人1月あたり2万円。
率は同じでも、集合研修で受けるかeラーニングで受けるかで、返ってくる額の天井が半分になる。公表されている料金の実額を見ると、eラーニング型は1名29,700円から、伴走型は1名300,000円からと桁が違う。桁の違う商品に、別々の天井がかかっている。
「最大25.9万円・2027年3月まで」と書いた1社
掲載社のうち.Pro AI研修は、330,000円/人(税込)という価格と並べて、「人材開発支援助成金 適用後(中小企業)70,500円/人(税込)」、そして「事業展開等リスキリング支援コースで最大25.9万円が助成・2027年3月まで」と公式サイトに書いている(2026年8月27日取得)。助成後の金額と期限の両方を書いているのは、20社でこの1社だけだった。
金額は同社が自社サイトに出している数字であって、当サイトが計算したものでも、制度が保証するものでもない。ただ、こう書かれていれば他社に問い合わせるときの物差しになる。なお、このコースの助成は経費助成と賃金助成の2本立てである。各社が書く「最大◯万円」が経費助成だけの額なのか、賃金助成を足した額なのかは、表記からは読み取れない。
期限のほうは、制度側の資料で裏が取れる。パンフレットの1ページ目に「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設しました」とあり、助成額・助成率の一覧表の注にも「令和8年度末までの時限措置」と書かれている。令和8年度末は2027年3月31日である。
この先どうなるかは書かれていない
パンフレットに明記されているのは「令和8年度末までの時限措置」という一文だけで、2027年4月以降に延長されるのか、内容を変えて続くのか、終わるのかは書かれていない。ここは推測せず、厚生労働省のページで最新の版を確認してほしい。
逆算すると、研修会社を選ぶ前に日程が決まる
手続きは3段階である。
- 訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、職業訓練実施計画届を都道府県労働局へ提出する
- 計画どおりに訓練を実施する(費用は支給申請までに支払い終えていること)
- 訓練終了日の翌日から2か月以内に、支給申請書を労働局へ提出する
効いてくるのは1段階目である。訓練開始日の1か月前までに届出を出し終えていなければならない。「来月から始めたい」という相談は、この時点で間に合わない。研修会社との契約日ではなく、労働局への届出日が予定表の起点になる。
届出の日までに社内で済ませておくことも2つある。研修や人事の担当課長などを職業能力開発推進者として選任すること、事業内職業能力開発計画を作って従業員に周知すること。まだ手を付けていない会社なら、実質的な起点はもう1か月早くなる。
中身の側にも制限がある。実施方法では「専らビデオのみを視聴して行う講座」と「自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明」が対象外で、社内に入れたツールの使い方説明会を研修として届け出る形は通らない。何が対象で何が対象外かの線引きは生成AI研修の選び方に書いてある。
制度名だけを書いている5社に、聞くこと
助成金に触れている7社のうち、コース名まで書いているのが2社。「人材開発支援助成金」という制度名までが3社。「助成金の申請が可能」「助成金活用のご案内」とだけ書いていて、どの制度かが分からないのが2社である。
人材開発支援助成金には7つのコースがあり、事業展開等リスキリング支援コースはそのうちの1つにすぎない。人材育成支援コースや人への投資促進コースなら、率も上限も別の数字になる。
問い合わせのときに埋める4項目
①どのコースを想定しているか ②そのカリキュラムの実訓練時間数は何時間か(限度額の行が決まる) ③実施方法は集合研修かeラーニングか(天井が30万円か15万円かに分かれる) ④希望する開始日から逆算して、計画届の提出期限に間に合うか。この4つが埋まると、各社の「助成金が使えます」を同じ土俵に並べられる。
助成金に一言も触れていない13社が、対象外だという意味ではない。サービスページに何を書くかは会社ごとの方針であって、個別の問い合わせには答えている会社もある。掲載社の一覧は各社の公式サイトの記載をそのまま転記したもので、対応の有無を当サイトが判定したものではない。7社の記載の内訳は助成金に触れている7社に別途まとめてある。
ここまでの数字はどれも「支給されればこうなる」という枠であって、自社の計画が通るかどうかは労働局の審査で決まる。パンフレットにも、計画届を出したことをもって助成金が確実に支給されるものではない、と書かれている。予算は、助成金が下りなかった場合の金額でも決裁が通る形で組んでおきたい。
出典
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版(PL080803開企04) https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf 取得日2026-09-03
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html 取得日2026-09-03
- .Pro AI研修の料金・助成金に関する記載は同社公式サイトより転記 https://dotpro.net/ai-learning/ 取得日2026-08-27
- 当社データ(掲載20社の公式サイト記載の集計) 取得日2026-08-27
- 助成の可否・支給額は個別の審査によります。最新の要件は厚生労働省および所轄の都道府県労働局にご確認ください