生成AIパスポートを自分の判断で受けた社員は、研修担当者の目には映らない。業務時間外に個人で申し込み、個人で受験料を払い、合否も本人にしか届かない試験だからだ。会社が把握しているのは、せいぜい休憩室で聞いた「今度受けてみる」のひと言くらいである。
その水面下の動きが、数字になって出てきた。一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)が2026年7月17日に発表したところでは、生成AIパスポートの累計受験者数は115,062人に達した。初回試験の実施からおよそ2年8か月での到達だという。
個人の受験(累計)
生成AIパスポートの累計受験者数 115,062人(2026年6月試験終了時点・GUGA発表)
掲載20社の公式サイト
資格(生成AIパスポートなど)に言及している社は0社(2026年8月27日取得)
同じ時期に、当サイトが掲載している研修サービス20社の公式サイトを読み直した。サービス内容の説明・料金・実績・対象規模のどこを探しても、この資格の名前が出てくる社は一つもなかった。研修を売る側と、資格を受ける側とで、話題になっているものがずれている。
受験者数は、回によって大きく動いている
GUGAが試験のたびに公表している結果を並べると、伸び方は一直線ではないとわかる。
| 試験月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 発表日 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年2月 | 28,415人 | 22,401人 | 78.84% | 2026-03-16 |
| 2026年4月 | 9,436人 | 7,487人 | 79.35% | 2026-05-19 |
| 2026年6月 | 21,752人 | 17,380人 | 79.90% | 2026-07-17 |
2月の28,415人は、当時の各回最多だったとGUGA自身が発表している。4月にいったん9,436人まで落ち、6月には前年同月のおよそ2倍にあたる21,752人まで戻した。回によって数千人単位で上下しながら、累計だけは着実に積み上がっている。
合格率のほうは、ほとんど動いていない。3回とも79%前後である。落とすための試験ではなく、受ければ8割方は通る試験だということになる。
この資格は、何を測っているのか
生成AIパスポートはIBT方式のオンライン試験で、60分・60問。受験資格に制限はなく、協会が公開しているシラバスに沿った基礎知識が出題範囲になる。特定の業務・職種に紐づいた実技試験ではない。
ここが、助成金の対象になる訓練の条件とはかみ合わない部分である。生成AI研修の選び方に書いたとおり、2026年8月3日の改正以降、人材開発支援助成金は「汎用的なプロンプトの使い方を学ぶだけの研修」を対象から外している。生成AIパスポートの受験対策も、性格としてはこちら側に近い。資格の取得そのものを助成金の対象訓練として申請できるかは、この試験の枠組みだけからは判断できない。
団体受験という制度がある
個人が申し込む試験だと決めてかかると、見落とす制度がある。生成AIパスポートには団体受験という申込方法があり、10名以上でまとめて申し込むと受験料が10%引きになる。受験料はもともと1人11,000円(税込)、学生は5,500円(税込)で、10名以上ならこれが9,900円まで下がる。
会社としてこの資格を研修の目標に据えるなら、社員が個々に申し込むより、この制度を使ったほうが窓口も費用も一本化できる。ただし団体受験は申込方法の話であって、研修の中身を保証するものではない。合格率が79%前後だということは、上の表がすでに示している。
資格をどう扱うか
掲載20社が資格に触れていない理由は、対象外だからとは限らない。助成金に触れているのは7社だった、という当サイトの別の集計と同じで、書いていないことは対応していないことを意味しない。ただ、この資格が個人の受験行動としてこれだけ動いている以上、研修担当者の側が知らないままでいる理由もない。
生成AIパスポートを研修の到達目標に置くなら、それが測っているのは汎用的なAIリテラシーであって、自社の業務でAIをどう使うかではないという前提を先に置く。合格した社員が、翌週から業務を変えているとは限らない。そこから先——自社の業務に落とし込む部分——は、資格ではなく研修が引き受ける範囲になる。
受講した研修が、資格取得の先までカバーしていたかどうかは、外からはわからない。当サイトが口コミを集めているのはそのためだ。受講した研修について、良かった点も物足りなかった点も、3分で投稿できる。掲載サービス一覧とあわせて、次に選ぶ誰かの判断材料にしてもらえればと思う。
出典
- 一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)「生成AIパスポート、累計受験者数が11万名を突破。2026年6月試験の結果を発表」(https://guga.or.jp/2026-07-17-1100)取得日2026-09-05
- 同「生成AIパスポート、各回の受験者数が過去最多の28,415名を記録。2026年2月試験の開催結果を発表」(https://guga.or.jp/2026-03-16)取得日2026-09-05
- 同「生成AIパスポート、2026年4月試験の結果を発表」(https://guga.or.jp/2026-05-19-1100)取得日2026-09-05
- 同 団体受験の案内ページ(https://guga.or.jp/group-exam/)取得日2026-09-05
- 同 試験概要ページ(https://guga.or.jp/outline/)取得日2026-09-05
- 当社データ(掲載20社の公式サイト記載の集計)取得日2026-08-27